2021年度年間テーマ『JOIN』
昨年度は、コロナ禍の中で病気以上に「分断」や「不信」の怖さを垣間見ると共に、「いっしょに過ごし つながれること」が「あたりまえ」ではないことをあらためて感じられた一年でした。まだその状況が継続する中、ネガティブな要素だけで終わらせず「これから」につなげていくための今年度のテーマは、“Join”です。
“Join”には、「結ぶ・結合する・参加する・仲間になる・いっしょになる」などの意味があります。意味の最初に書いた“結ぶ(むすぶ)”の語源の一つは「苔むす」の“むす”(君が代の歌詞の「苔のむすまで」のむす)で、苔が生えてくる様子から「いのちが生まれる」ということを表しています。また、息子・娘の“むす”も同じ語源で、「生命の誕生」を喜んだことに由来すると言われています。
さ~くるで生まれた最初の歌である“いのちの「さ~くる」”の歌詞にも、“すべての「いのち」は支え合い つながりながら生きている”という箇所がありますが、前述のように「結ぶ」と「いのち」は相互につながっているものです。だからこそ、「分断」はいのちを育むこととは真逆の働きをします。
では、どうすれば「分断」ではなく「結合」が生まれていくのでしょうか?その一つのヒントとして、豊橋技術科学大学の岡田美智男教授という方が研究されている「弱いロボット」の話があります。「弱いロボット」とは、できることを強調した個の力で物事を解決する「個体能力主義」の自己完結的な発想ではなく、自分だけでは問題を解決できないが周りとの関係性を豊かに構築することで目的を達成してしまうようなロボット(例として、腕がない「ゴミ箱ロボット」は自分ではゴミを拾えないが、ゴミを見つけたら体を揺らしたり「もこもこ」などと言ってアピールをして人にゴミを拾ってもらう)です。
人の体を外から見ると自己完結しているように見えますが、内側から自分を見ようとすると「鏡」無しでは自分の顔すらも見えません。そういう意味では本当は誰もが不完結です。だからこそコミュニケーションを取って補完し合うことがたいせつですが、人間は不完全さという意味での「弱さ」を他の人に見せようとせず、強がってしまう傾向があります。その「自分で作った壁」を越え弱さをさらけ出せるために必要なのは、相手を「信頼」することだと思います。そして、相手もまた弱さをさらけ出せ、その上で「同情」ではなく「共感」しながら“いっしょにいる”ことで、信頼関係は更に強くなります。
お互いに「不完全さ」を受容・補完し合うからこそ、人と人がつながり、支え合いの中で「強いレジリエンス(困難を乗り越える力)」も生まれます。まさに、先日の「さ~くるソング総選挙」でグランプリになった「キミといるから」の歌詞にもあるように、「キミがキミだから 僕が僕でいられるよ それがいいんだから さぁ涙をふいて」の通り、自他をたいせつにできて前に進むチカラが生まれます。
そして、もう一つの“いま”を表すキーワードは「不安定・不確実」と言えるのではないでしょうか。 ただでさえ、「さ~くる」の真ん中が“人”であり“自然”の中で活動することが多い以上、コロナ禍に限らず「想定外」のことが起こるのは、ある意味「想定内」の必然なことです。そのような中でどうするかのまた一つのヒントとして、フランスの社会人類学者のクロード・レヴィ=ストロースという人が提示した「ブリコラージュ」という“野生の思考”があります。「ブリコラージュ」とは、一見不合理に見えるが合理主義よりも合理的な未開(と言われる)民族の思考から着想を得たもので、有り合わせのものをかき集めながら、周りの環境や制約を上手に生かして問題を解決していく方法です。例えるなら、レシピ通りに料理を作るのではなく有り合わせの食材で調理するものが意外においしくできたり、画家の作品が筆を動かしているうちに柔軟に変化して自分のイメージを追い越して想像もしなかった世界を描き出すようなものです。メンバーと過ごしたり活動をしていく中で、ひょんなことからメンバー同士がケンカをしたり、急にアクシデントが起こるようなこともあり得ます。また逆に、想像もしていなかったようなすてきなメンバーの言動や、人と人とがつながる瞬間や場が見られることもあります。
そのような「問題」に対応する上でも、また たいせつな「とき」を見逃さないためにも、ひとりひとりが“しなやかなアタマ・カラダ・ココロ”を持って、人・事・環境に、まずは“Response(反応)”していければと思います。「自分だけで“正解”を」と思うと足や動きが鈍くなったり止まってしまうので、そんな時こそお互いに信頼・カバーし合いながら、“Join”していけるような空気・つながりを創っていきましょう。15周年記念のTシャツにも込めた想いのように、「“いま”だからこそ ココロをつなごう☆」を忘れずに
2021.4.2 アボジ
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