2018年度 年間テーマ『Hope』
2018年度 さ~くる年間テーマ “Hope”
多くの人の支えと想いのおかげで、さ~くるは今秋で“13歳”を迎えます。人間に例えるなら中学生になり、また新たな気持ちで「次の段階のStartに向け歩みだすとき」である今年度のテーマは、“Hope”です。
“Hope”には「希望・望む・願う・見込み・期待・希望の的・希望を与えるもの(人)」などの意味があり、今まで多くの“Hope-希望”に関しての、調査・研究や考察がなされています。
2016年に7ヵ国の大学生に「現在の自分や社会への満足度と未来への期待度」を調査した結果、日本は7ヵ国の中で唯一、マイナス値を示し、日本の若者の多くは「未来は現在より悪くなる」と考えていることが分かりました。その3年前に行われた「自分の将来について明るい希望を持っている」という質問に対しても、日本は突出して低い数値を示しています。その原因の一つは受験や就職などで一度失敗するとなかなか挽回できない日本の社会システムにあり、そのため日本の若者はマイナス要因をネガティブに捉える傾向が強く、希望がどんどん縮小していると言われています。
一方で別の調査では、異文化交流活動をした若者の方が、そうでない若者よりも将来に希望を持っている割合がずっと高いという結果が出ています。つまり、「現在のシステムやルールがすべてではない」と気づき、「より柔軟で寛容な社会を創る」ことが、日本の若者が希望を取り戻すための大きな鍵になると推察されています。
また、奇しくもさ~くるが活動を開始した2005年から「希望学」を立ち上げ、希望についての研究をされてきた東京大学社会科学研究所教授の玄田有史氏は、希望は「wish(強い気持ち・思いを持つ)」、「something(将来的に目指す“何か”を明確に)」、「cometrue(実現に近づくための道筋や段取りを具体的に)」、「action(目標や計画だけではなく状況を打開するための行動)」の「四つの柱」から成り立っており、これらの四つの柱を基に希望を定義するならば、
Hope is a Wish for Something to Cometure by Action
(希望とは、行動によって何かを実現するための気持ちである)
と言われています。
その過程の中で最後に「行動」に辿りつけたのは、厳しい経営状況を乗り越えたある経営者から言われた「希望に棚からボタ餅はない。現実にぶち当たって動いてもがく中にこそ希望がある」との言葉によって“希望というのは心の内面だけにあるものではなく外側にある社会とつながってこそ成り立つ”と気づけたから、と述べられています。
この研究の間、さ~くるも“実践”の中で「人」や「社会」と向き合ってきました。先に述べた「異文化交流」の意味は、システムやルールだけではなく“多様な価値観”に触れることだと思います。さ~くるには、本当に多様な年齢・地域・個性・感性の人が集まっていて、互いにそれぞれの“世界”を感じ合うことは、海外に行くこと以上に価値観を揺さぶり、心が動くインパクトを持っています。そして、異なる言語・文化の人と相互理解を深めていく上では「単語」の意味だけではなく文化の「背景」やそれまでの「文脈」を知り・感じようとしないと通じ合えないように、メンバー間、メンバーとリーダー、リーダー間が「表出している言葉・行動」や「その言葉に自分が持つ印象」だけで捉えるのではなく、“その根底に流れるもの”を感じ合えるようにしていくことがたいせつです。
また、「さ~くる」の魅力や意義は「すき・楽しいと思える」ことや「人と人のつながり」はもちろん、発足時から掲げている「体験→発見→実現」に表されているように、“想いをカタチにする体験”ができることにもあると思います。それは前述の“希望の四本柱”の「気持ち・何か・実現・行動」にも通ずるもので、スキーや自転車もチャレンジするからこそ転びもしながらできるようになるのと同じように、まず、さ~くるが「柔軟で寛容な社会」であれるようにし、各人が「それでも大丈夫」という安心感を持って“失敗や挫折”も経験できることが、「困難を克服するプロセスで生まれる希望」を、自分がいる場で持てることにつながると実感しています。
しあわせなことに、「未来を担うHope」の子ども・若者たちに、“希望”を感じることもたくさんあります。
魯迅が著書「故郷」の中で、「思うに希望とは、もともとあるものとも言えぬし、ないものとも言えない。それは地上の道のようなものである。もともと地上には道はない。歩く人が多くなれば、それが道になるのだ。」と述べているように、この13年間の中ですでにそれぞれの場所で創ってくれていますし、“これから”社会の中につながっていく人たちが、「HAPPYなセカイ」に通じる“道”を拓いていってくれることを信じています。
自分(達)の手で“舵”を取って、「自他共にしあわせであれる航路(みち)」を見出せる一年にしましょう☆
2018.04.02 吉田 伸吾(アボジ)